2016年6月10日金曜日

近藤誠理論批判

がん放置療法に書いたように、私は近藤誠医師のがんに対する意見に共感してきたのだが、それはそれで一つの立場だとしても、最近、そうとばかりも言えないなと如実に思ったのは、天野貴元さんのブログを読んでである。
すなわち、舌がんの手術後、肺などに転移し、ステージⅣまでがんが進行し、一時は絶望視されたのだが、サイバーナイフや抗がん剤などを駆使して、持ち直し、天野さんは将棋の赤旗名人になるまでに回復した。
しかし完治したわけではないがんは、ぶり返してきて、その都度天野さんは、将棋の自戦記を書くように淡々と治療の様子と気持ちを綴るのが読んでて痛々しかった。先月までは、ほとんど毎日ブログの更新があったのだが、9月に入って急に頻度が減り、ここのところ一週間エントリがない。大丈夫だろうか。
ともかく、天野さんがここまで持ちこたえることができたのは、少なくとも近藤誠理論に依存したからではないのだろうと思い、アンチ近藤誠理論の本を何か読んでみたくなった。
しかし、医学界で近藤誠氏が嫌いな人を探すことに何の苦労もなくて、そういう本は雨後の竹の子のようにある。そこで、これが代表作かどうかわからないが、とりあえず、大場大著「がんとの賢い闘い方 - 近藤誠の理論徹底批判」新潮新書を買って読んでみた。
読んでみて、これはこれで冷静な記述でいい本だと思うのだが、いけないのは帯の記述である。すなわち、「放置がベスト」、「抗がん剤は毒」、「検診はムダ」はすべて大嘘、とあるが、これは場合により真になる命題ばかりなので、頭ごなしにすべて大嘘というのは妥当ではない。そもそもが、「抗がん剤は毒」はまさにそうで、毒である抗がん剤をうまく駆使するのが腫瘍内科医の腕の見せ所ではないか。
それでも、大場氏の指摘でなるほどと思うのは、近藤氏の「がんもどき」という呼び方が全く学問的でない、ということで、そういうものに治療方針が依存するわけにはいかない、という点である。すなわち、がんもどきなら治療する必要はなく、がんもどきでないなら、転移しているので治療しても無駄というのだが、大場氏も指摘するように転移してもなんとか持ちこたえている例は聞く。
そこまではいいのだが、以下は少数の症例をもって、なんとか近藤理論を叩き潰そうと、力み過ぎていると思われる。例えば、腫瘍内科医として抗がん剤に肩入れするあまりに、抗がん剤が著効を示して患者が快方に向かった例を挙げているが、多分であるが、抗がん剤で体力を低下させて寿命を縮めてしまった例も少なからずあるのではないか。
また、がん検診は絶対に有効みたいな言い方をされているが、「過剰診断: 健康診断があなたを病気にする」H.ギルバート ウェルチ 筑摩書房のような本もある。
私は、健康診断をうけて思うのだが、放射線その他、検査されるということの体に対するインパクトが結構大きい。これが無条件で是ということはないのではないか、と感じる。
ということで、正解は、近藤理論と大場理論の中間にありそうだが、それは人により症状により異なるので、正解を見つけるのは難しいのではないか。
私はというと、がんになったら放置はしないかもしれないが、なるべく体にインパクトの少ない治療で済ませたいものである。尤も一旦治療が始まったら、自分の希望どおりになるという保証もない。結局、なんで死んでも死には死になのだろうか。

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コメント(3)

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あやたろうさん
>体にインパクトの少ない治療で済ませたいものである
最近、私の肉親に肺癌と膵臓癌と白血病が発症しましたが
もう90歳まで生きてるんで、癌予防とか早期発見の検診とかなかった時代は、充分すぎる?老衰死の一歩手前状態なんです。
たぶん相当長期間の病歴だと思うのですが、医者大嫌いで
検診は生涯受けていないという親なんで
おそらく、70歳くらいで早期癌を発見されて、手術や治療漬けに
されていたら10年前に死んでいたと思いますよ。
健康診断をきちんとやてる国と、ほとんどやってない国の平均寿命は一緒だという統計すらあるくらいです。
無理やり病人作って寝たきりで長生きさせる結果になってるのかも
しれません。
医学会は当然治療こそ彼らのアイデンティティですから
そういう価値観を否定する見解はご法度なんでしょう。
予防といえば健康産業や医療機器メーカーが
みんな潤いますから、早期発見とういうのは良い大義名分です。
そうそう医療保険会社も大賛成ですよね。



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山椒魚さん
> たぶん相当長期間の病歴だと思うのですが、医者大嫌いで
> 検診は生涯受けていないという親なんで
> おそらく、70歳くらいで早期癌を発見されて、手術や治療漬けに
> されていたら10年前に死んでいたと思いますよ。
おそらくそうなのでしょう。うちの父も80歳のとき胆管癌がみつかって
無理やり手術して、すっかり弱ってしまいました。そして、結局その1年半
後に亡くなりました。ただ、手術しなかったらどうなったのか、それも想像
できませんが。
> 医学会は当然治療こそ彼らのアイデンティティですから
> そういう価値観を否定する見解はご法度なんでしょう。
それで生活しているのですから、治療しない方がいいなんてとても言えない
でしょう。別の例で、一部の経済学者が、特許法なんてない方が経済的に
繁栄するのだという説を出していて、分かるような気もしますが、私は
弁理士ではないけど、間接的に特許法に依存した仕事で給料をもらっている
ので、特許制度無用論に与するわけにはいきません。
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自己レスですけど、天野さんのブログの9月16日の記事に以下のようにありました。
「今日もまた新しい病院へ行って新しい治療についての相談。今まで全ての医者に断られてきたけど、奇跡を信じて行くしかない。」
つい過剰な治療を施してしまうのが医者なら、治療の方針が立たないからと患者を断ってしまうのも医者なのですね。それが問題というつもりはなくて、仕方がないのでしょうね、という単なる感想です。

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